銀行では、あれだけ電話して、確認して、間に入ってきた。それが自己PRでは「周囲と協力しました」の一行。あの忙しさ、どこへ行ったんでしょう。
その一行にまとめる前に、思い出したいのは、
銀行での一場面を、公務員の自己PRで伝わる文章にしていきましょう。
担当業務は同じでも、自己PRまでおそろいにしない
「関係者と連携し、円滑に業務を進めました」。
名前を替えれば、隣の席の人にも使えそうです。せっかくの自己PRなのに、本人がまだ登場していません。
「融資を担当した」だけでは見えなかった、その人の判断と行動。自己PRで伝えたいのは、ここです。
誰の返事が気になっていたか。なぜ、その人に先に話を通したのか。普段はわざわざ説明しない判断を、言葉にしてみてください。
「調整力」という名前は、あとで大丈夫です。まずは、自己PRに本人を登場させましょう。
「調整力」の中身を、一つの場面で見せる
以下の設問・経験は説明用の架空例です。実在する自治体の設問や筆者の体験ではありません。
あなたの強みを、仕事で発揮した具体的な経験とともに説明してください。また、その強みを入庁後の仕事でどう活かしたいかを書いてください。
経験を書くだけでは、まだ答えの途中です。今回は「強み」「経験」「入庁後」の三つに答えます。
ある融資担当者は、何を動かしたか
書類がいつそろうか、分からない顧客が用意する書類と、税理士に頼む書類が混在。融資の希望日に間に合うか、見通しが立ちません。
担当と準備日数を、一つずつ確認不足書類を一覧にし、顧客と「誰が・いつまでに」を確認。行内の担当者には、届く予定を伝え、確認の順番を相談しました。
日程を共有し、希望日に実行顧客が書類を用意し、行内担当者が確認。関係者で必要な手続きを終えました。
今回は、融資額より「進め方」を残す
この架空例では、融資の金額も大きく、支店の目標達成にもつながりました。ただ、今回伝える強みは、関係者の作業を整理して仕事を進めることです。
| 残す | 担当・期日を整理した行動と、その結果 この人が仕事をどう進めるかが分かる。 |
|---|---|
| 外す | 融資額と支店の目標達成 実績としては大切でも、今回の強みを説明する中心ではない。 |
「不足書類を一覧にした」だけで終わらず、その一覧を使って何を確かめたかまで書く。ここに、この人の仕事の進め方が出ています。
大きな実績がなくても、説明できる仕事を探す
支店で表彰された経験が思いつかなくても、いったん手を止めなくて大丈夫です。窓口で手続きの説明を変えた場面や、引き継ぎで確認事項を整理した場面も、書く材料の候補になります。
ただ、「丁寧に説明した」「ミスを防いだ」だけでは、まだ仕事の中身が見えません。相手がどこで迷っていたのか。何をどの順番で伝えたのか。確認方法を変えたなら、何を変え、その後どうなったのか。自分の行動を思い出せる経験から選んでみてください。
これは「小さな実績のほうが評価される」という話ではありません。大きさだけで選ぶと自分の役割が書けないことがあるので、まず説明できる材料を探します。
入庁後も、同じ「動き方」でつなげる
ここで急に「地域の発展に貢献します」と広げると、書類と日程を整理してきた話から、ずいぶん遠くへ行ってしまいます。
職場が変われば、手続きも役割分担も変わります。まず現場の進め方を理解し、そのうえで自分がどう取り組みたいかを書きます。
選んだ材料をつなぐと、こうなる
私の強みは、関係者が担当する作業と期日を整理し、仕事を進めることです。
融資の手続きで、必要書類がいつそろうか分からず、希望日に実行できるか見通しが立たないことがありました。私は不足書類を一覧にし、顧客自身が用意するものと税理士に依頼するものを分け、それぞれの準備日数を確認しました。その予定を行内の担当者に伝え、確認する順番を相談しました。顧客と行内担当者で日程を共有し、必要な確認を終えて希望日に実行できました。
入庁後も、複数の人が関わる仕事では、まず手続きや役割分担を理解し、必要な作業と期日を確かめながら、関係者と相談して進めたいと考えています。
「調整力」という言葉は使っていませんが、何を調整したのかは読めます。強みの名前より、この人に任せたら、どう動いてくれるかが見える文章にします。
書面では、行動を残して文字数に収める
応募先の設問に合わせて、必要な答えをそろえる
応募する年度・試験区分の案内と実際の入力欄で、設問・文字数・提出方法を確認します。強みを聞かれているのか、困難への対応を聞かれているのか。入庁後の活かし方まで求められているかも確かめ、聞かれたことに答える文章に整えます。
確認先の例:堺市の令和8年度受験案内等では、面接カードの様式や提出方法が試験区分ごとに案内されています。実際の応募では、応募先の案内を確認してください。
削るのは、背景の説明から
完成例は考え方を見るための文章です。そのまま応募欄に入れるのではなく、自分の経験と実際の設問に合わせて書き直します。
- 担当を分ける
- 準備日数を確かめる
- 確認の順番を相談する
先ほどの架空例なら、経験部分を次のように短くできます。
融資の手続きで必要書類がそろう時期を見通せなかったため、不足書類を顧客が用意するものと税理士に依頼するものに分け、準備日数を確認しました。行内担当者と確認の順番を相談し、関係者で日程を共有して、必要な確認を終えたうえで希望日に実行できました。
「関係者と連携しました」の一言に縮めると、何をしたかがまた見えなくなります。削ったあとも、自分の行動を読み取れるか確かめてください。
短くした経験部分だけでは、先ほどの設問への答えはそろいません。強みと入庁後の取り組み方も含め、全体を指定の文字数に整えてください。別欄で聞かれている内容は、欄ごとの設問に合わせます。
銀行用語は、したことが分かる言葉にする
「稟議を回した」とだけ書くより、「融資の判断に必要な情報をまとめ、行内の担当者に確認を依頼した」と書くほうが、何をしたかは具体的になります。ただし、これは本当にその作業をした場合の言い換えです。担当していない判断まで、自分の仕事に足さないようにします。
顧客名や外へ出せない取引情報を載せなくても、自分が確認したことや相談した順番は説明できます。固有名詞を伏せるだけでなく、業種・地域・金額などの組み合わせで相手が分からないかも確認してください。
面接では、文章の先を聞かれても話せるようにする
書面ができたら、一度声に出して説明してみます。読む途中で息が続かなくなる文は、区切って構いません。指定された時間があれば、その範囲で話せる長さに調整します。
図の三つを、先ほどの架空例でも確かめてみます。実際の出題予想ではなく、説明の抜けを探すための問いです。
- 不足書類と準備日数は、誰に、どう確認しましたか。
- 自分で決めたことと、上司や担当者に相談したことは何ですか。
- 今回の進め方で、次も使えそうな点や見直したい点はありますか。
答えに詰まったら、立派な続きは作らず、覚えている事実に戻ります。チームで出した結果なら、自分の担当とほかの人がしたことを分けて話せるようにしておきましょう。
志望動機まで、一つの欄に詰め込まない
仕事の進め方は書けたけれど、「なぜその自治体なのか」が抜けている気がする。そんなときは、志望動機の設問を別に確認します。
ここで作った自己PRは、経験を通して自分の強みを説明する文章です。設問が志望動機も求めている場合は、どちらにも答えます。
自分の経験でも、止まっていた点から書く
融資に限らず、窓口の手続き、引き継ぎ、行内の事務から一つ選んでみてください。
- そのままだと、何が進まなかったか。
- 自分は何を確かめ、何を変えたか。
- その後どうなったか。ほかの人は何をしたか。
「連携した」と書いたら、誰に何を聞き、返事を受けて何をしたかまで戻ってみる。思い出せない部分は、きれいな話になるよう埋めず、別の経験を探します。
三つを書けたら、応募先の設問と並べます。聞かれていることに答えているか、自分がしたことは具体的か。入庁後の話が必要なら、その行動をどう活かしたいかまでつなげます。
自己PRの最後の確認は、強そうな言葉を足すことではなく、この一つです。
「調整力があります」を隠しても、自分がしたことが伝わるか。





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