銀行員と公務員の仕事内容の違い|両方経験して分かった毎日のリアル

銀行員と公務員の比較

銀行から自治体の一般行政職へ移ると、毎日の仕事内容はかなり変わります。担当する仕事だけでなく、一日の進み方や、一件の仕事を終えるまでの手順も違います。

この記事の結論

  • 自治体の一般行政職は窓口だけではありません。事業の執行、契約、予算、議会対応、庁内調整まで、配属先によって仕事の幅があります
  • 融資は案件ごとの日程で実行まで進みますが、自治体の事業は前年度の予算確保から始まることもあります
  • 仕事内容を具体的に知っておくと、公務員へ移ったあとに誰と何をどう進めるのかをイメージしやすくなります

両方で働いた経験から、その違いを具体的に整理します。

銀行員と公務員は、普段どんな仕事をしているのか

銀行も自治体も、配属先が変われば毎日の仕事は大きく変わります。銀行なら窓口と渉外では仕事が違いますし、自治体も住民対応をする部署と、事業や予算を扱う部署では一日の過ごし方がまったく違います。

私が銀行で担当していたのは渉外・融資です。自治体では、事業の執行と管理、庁内の調整に携わりました。どちらも、私が経験したのは仕事全体の一部です。

区分 銀行 自治体の一般行政職
窓口・住民対応 入出金、口座開設、本人確認、各種相談など 届出の受理、証明書の発行、相談、電話対応など
外部とのやり取り 顧客訪問、融資提案、稟議、社内調整など 事業執行、契約手続、事業者との打ち合わせなど
組織内の仕事 本部での企画、審査など 企画、予算、議会対応、庁内調整など

銀行の仕事を3つに分けて見る

銀行の仕事は、大きく見ると窓口・店頭事務、渉外・融資、本部業務があります。

窓口では、来店した顧客の入出金や口座の手続などを扱います。渉外・融資では、担当先を訪問して話を聞き、資金ニーズがあれば提案し、支店内や審査部と調整しながら融資実行まで進めます。本部には企画や審査など、営業店を支える仕事があります。

参考|公的情報での裏づけ(銀行)

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、銀行等窓口事務では現金や伝票、本人情報の確認などが、銀行・信用金庫渉外担当では融資に関する書類作成や社内報告、他部門との調整などが仕事内容として挙げられています。

この記事で銀行側を詳しく扱うのは、私自身が経験した渉外・融資です。

自治体の一般行政職も3つに分けて見る

自治体の一般行政職も、窓口だけではありません。

たとえば、届出を受けたり証明書を発行したりする住民対応の仕事があります。予算に沿って事業を進め、事業者と打ち合わせをし、契約や支払まで担当する部署もあります。企画を考えたり、予算を組んだり、議会へ説明する資料を作ったりする仕事もあります。

同じ一般行政職でも、どこに配属されるかで毎日の仕事はかなり変わります。

私がいたのは、事業の執行と管理、庁内の調整をする部署でした。住民の方と直接向き合う機会は少なく、資料を作ったり、他部署と調整したりする時間の比重が高い職場でした。

参考|公的情報での裏づけ(自治体)

job tagでも、地方公務員の行政事務には行政文書の作成や契約手続などが含まれ、部署によって具体的な仕事内容が異なると説明されています。異動によってさまざまな分野の仕事を経験する点も、一般行政職の特徴として示されています。

公務員と聞いて窓口だけを思い浮かべていると、実際の配属先とのギャップが大きくなります。

一日の仕事はどう進むのか

銀行でも自治体でも、朝にその日の仕事を整理して優先順位を決める点は同じでした。ただ、急な仕事がどこから入ってくるのかは変わりました。

銀行では、朝にその日やる事務や稟議を確認し、どの担当先へいつ訪問するか、誰へ連絡するかを決めて時間を割り振ります。自治体でも、朝にやることを整理する点は同じです。私がいた部署では住民の方と直接向き合う機会が少なかったため、資料作成や他部署との打ち合わせを中心に、その日の順番を決めていました。


銀行員と公務員の仕事内容の違いを示す図解。一日の進み方と、急な用件が入る場面を比較している

もっとも、どちらも朝に決めた予定だけで一日が終わるわけではありません。

予定していた業務と、急に入る仕事

銀行で急な仕事が入る相手は、主に本部と顧客でした。

本部から報告を求められて資料を作ることもあれば、急な会議が入ることもあります。担当先から連絡があれば、予定を変えて訪問したり、事務手続きを確認したりします。銀行員なら珍しくない場面だと思います。

自治体へ移ると、予定外の仕事が入ってくる相手が変わりました。

上層部からの指示、住民の方からの依頼、議員からの問い合わせ、他部署からの相談などです。さらに、どの部署が担当するのか決まっていない案件では、実際の仕事に取りかかる前に、まず担当を決めるための庁内調整が必要になることもありました。

運営者

運営者

私自身、銀行員時代は常に「戦場」にいるような感覚で、気づけば夕方になっていました。苦痛ではありましたが、時間は一瞬で過ぎていきました。自治体ではゆとりがあり、雑談する場面もありましたが、その分、一日の終わりが遠く感じました。

同じ一日でも、銀行と自治体では時間の流れ方まで違って感じました。どちらが良いという話ではなく、私自身が両方で働いて感じた違いです。

月・半期・年度で回ってくる仕事

その日の予定は、目の前の仕事だけで決まるわけでもありません。月末や半期、予算編成や年度末など、周期的に回ってくる仕事が今日の優先順位に影響します。

区分 銀行 自治体の一般行政職
短い周期で繰り返す仕事 月末の実績集計、期日管理など 例月の定例処理、支払、報告など
数か月単位で山が来る仕事 半期の目標設定、実績の確定など 予算編成期、議会開会期の対応など
年度を意識する仕事 期初の目標設定など 翌年度予算の準備、年度末の執行締めなど

銀行では、月末や半期の区切りを意識する場面が多くありました。自治体では、予算を伴う事業について前年度から翌年度まで続けて準備することがあります。その違いは、その日の予定を見ているだけでは分かりにくい部分です。

こうした周期の違いは日々の感じ方にもつながり、銀行では営業ノルマと期日という短期のプレッシャーが、自治体では調整と説明が長く続くストレスが前に出ます。どんなことで消耗するのかまで比べたい場合は、別の記事で整理しています。


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一日の進み方だけでも違いはありますが、私がより大きな違いを感じたのは、一件の仕事を始めてから終えるまでの手順でした。

一件の仕事を終えるまでの手順はどう違うのか

私が担当した融資案件と、自治体で事業を進める中で扱った業務委託案件では、一件が終わるまでの手順がかなり違いました。

銀行では渉外・融資を担当し、自治体では事業の執行と管理、庁内調整を担当していました。ここで取り上げる業務委託は、自治体で担当した仕事そのものではなく、事業を進める中で扱った案件の一例です。


銀行員と公務員の仕事内容の違いを示す図解。一件の仕事に関わる確認と承認の相手を比較している

同じ一件を終える仕事でも、途中で誰の確認と承認を通すかが違いました。

融資の案件はこう進んだ

担当する地域の中から候補先をリストアップし、どこにどんな資金ニーズがありそうか仮説を立てます。

顧客へ事前にヒアリングし、可能性がありそうなら支店内で協議します。課長、次長、支店長と話を上げ、必要に応じて審査部にも相談します。

社内で方向性を確認したうえで顧客へ提案し、金額や金利などの条件について合意できれば稟議を作ります。その後、事務面を確認し、契約の手続を進めます。

契約が済み、実行日に融資金が顧客の口座へ入って、一件が終わります。

銀行員なら見慣れた流れだと思います。担当者が顧客と話を進めながら、銀行内でも決裁を通していく仕事でした。

自治体で扱った業務委託案件はこう進んだ

自治体で扱った業務委託案件は、実際に契約する年度より前から始まりました。

まず、翌年度にその事業を行うための予算を確保します。部署内で案を固め、関係する部署と調整し、首長の承認を経て予算案として議会へ提出します。議会で予算が承認されれば、翌年度に事業を進める前提が整います。

ここで議会が承認するのは、個々の業務委託契約ではなく、その事業に使う予算です。

年度が変わると、具体的な契約手続へ進みます。複数の事業者から見積を取り、打ち合わせをしながら金額や仕様書を固めます。その後、庁内の審査を経て入札を行い、事業者が決まれば契約します。

契約後は業務を進め、完了したことを確認して支払を行います。そこまで終わって、一件の業務が完了します。

段階 銀行(融資案件の一例) 自治体(業務委託案件の一例)
起点 候補先の選定、資金ニーズの仮説 前年度の予算確保
組織内の手続 支店内協議、課長・次長・支店長、必要に応じて審査部への相談 部署内で案を作成し、関係部署との調整、首長承認
外部との関わり 顧客への提案、条件合意 議会で事業予算の承認
契約まで 稟議、事務確認、契約手続 見積、仕様書、庁内審査、入札、契約
完了 融資金が顧客口座へ入る 業務完了を確認し、支払を終える

今回取り上げた融資案件は、案件ごとの日程で実行まで進めていきました。一方、予算を伴う自治体の事業では、前年度から翌年度まで手続が続くことがあります。同じ一件を終える仕事でも、途中にある手続と時間の幅はかなり違いました。

その確認は何を防いでいるのか

銀行でも自治体でも、確認を重ねるのには理由があります。ただ、実際に何を確かめているのかは同じではありません。

銀行で融資案件を進めるときは、返済の見込みを確認し、金額や金利などの条件に認識違いがないように進めます。契約や事務の手続に誤りがないことも重要です。

私自身、特に気をつけていたのは、後から自分の判断だけでは変えられない内容でした。金利や金額について、顧客と銀行の認識がずれたまま進めるわけにはいきません。

自治体でも、「後から話が違う」とならないように進める点は同じでした。そのうえで、法令や条例等に沿っているか、予算上問題がないか、過去の取扱いと整合するかなど、行政として説明できる状態にしておく必要があります。

項目 銀行(融資案件の一例) 自治体(業務委託案件の一例)
目的 顧客の資金ニーズに応え、融資を実行する 予算と法令や条例等に沿って事業を実施する
主に確かめること 返済の見込み、金利や金額などの条件、契約書類 法令や条例等との整合、予算、過去の取扱いなど
防ぎたいこと 条件認識のずれ、返済可能性の見誤り、事務上の誤り 不公平な取扱い、説明のつかない支出、手続上の誤り
一件の完了 融資金が顧客口座へ入る 業務完了を確認し、支払を終える

自治体では、目の前の案件だけでなく、過去に似た案件をどう扱ったか、別の相手にも同じように説明できるかまで確認する場面がありました。

運営者

運営者

私自身、庁内会議で気づいたことがあります。飛び交っていたのは、「どう住民のために進めるか」ではなく、「どうすれば責任を問われずに済むか」という言葉でした。公平性と納得感を前提にする以上、仕方のないことではあります。公務員の仕事は「進めること」よりも「止めないための整合」に重心があるのだと実感しました。

仕事内容だけでなく、年収や安定性、将来性まで含めて銀行と公務員を比べたい場合は、総合比較の記事でまとめています。


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一方で、職場が変わってもそのまま役立った仕事の進め方もありました。

銀行で身につけた進め方は、公務員でも使えたのか

私の場合、銀行で身についた期日管理や仮説を立てて進める考え方は、自治体でも役立ちました。一方、自治体で自分の案を進めるには、銀行とは別に覚えることもありました。

融資案件では、融資実行日から逆算して稟議や事務の予定を組みます。


銀行員と公務員の仕事内容の違いを示す図解。銀行で身につけた進め方が自治体で使われた場面を示している

自治体でも、契約や事業の実施時期を見ながら、必要な手続を逆算して進めました。期日から逆算して段取りを組む考え方そのものは、職場が変わっても使えました。

運営者

運営者

私自身、自治体へ移って驚いたのは、銀行員として身につけた「期日管理」や「仮説検証」が異様に重宝されたことです。100通りの勝ち筋を考え、泥臭く関係各所を調整する力。銀行という看板を外したとき、自分の中に残っていたのは、こうした仕事の進め方でした。

ただし、銀行でのやり方がそのまま通らない場面もありました。自治体で自分の案を進めようとすると、その根拠を求められます。関係する法令や条例等は何か、庁内に前例があるか、ほかの自治体に似た事例があるか。感覚や経験だけでは通用しませんでした。

参考|持っていけたものと、自治体で覚えたもの

そのまま役立ったもの

  • 期日から逆算して段取りを組む
  • 仮説を立てて確かめる
  • 関係各所と調整する

自治体で新たに覚えたもの

  • 関係する法令や条例等を確認する
  • 庁内で必要な手続を踏む
  • 前例や他自治体の事例を根拠として確認する
  • 予算の仕組みを踏まえて事業を進める

これは私自身が銀行から自治体へ移ったときの経験です。すべての銀行や自治体で同じという意味ではありません。

法令や条例等、前例、予算の仕組みは、自治体へ移ってから実務の中で覚えていきました。一方で、期日管理や仮説検証は、銀行にいたころには特別な力だと思っていなかったものです。

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自治体から銀行へ戻ったときに持ち帰ったのも、新しい実務スキルではありませんでした。組織への不満はどこに所属してもあるものだと分かってから、仕事の時間中は求められることに応えようと考えるようになりました。

銀行員と公務員の仕事内容についてよくある質問

銀行員と公務員の仕事内容は、事務作業の中身、異動による変化、予定外の仕事の入り方にも違いがあります。

以下は、私が経験した範囲と、公的情報で確かめられる範囲での回答です。

銀行員と公務員では、事務作業の内容はどう違いますか?

銀行で私が担当した融資では、金額や金利などの条件、契約書類、実行までの事務を確認していました。自治体では、法令や条例等、予算、過去の取扱いとの整合を確認しながら事業を進めます。

銀行員の経験は、公務員のどの仕事で役立ちますか?

私の場合は、期日から逆算して段取りを組むこと、仮説を立てて確かめること、関係各所と調整することが役立ちました。一方で、法令や条例等、前例、予算の仕組みは自治体で改めて覚えました。

自治体の一般行政職は、異動すると仕事内容が変わりますか?

変わります。job tagでも、地方公務員の行政事務は部署によって具体的な仕事内容が異なると説明されています。住民対応をする部署と、事業・予算・議会対応を扱う部署では、日々の仕事も大きく違います。

公務員でも技術職や専門職は、仕事内容が違いますか?

違います。この記事で扱っているのは自治体の一般行政職です。土木、建築、保健師、保育士などの技術職・専門職は、担当する業務が異なります。

銀行員と公務員では、予定外の仕事が入る場面はどう違いますか?

私の銀行員時代は、主に本部や顧客から急な仕事が入りました。自治体では、上層部、住民の方、議員、他部署などから仕事が入ります。担当部署が決まっていない案件では、誰が担当するのかを決める庁内調整から始まることもありました。

銀行から自治体へ移って感じたのは、「事務や調整がある」という言葉だけでは、実際の仕事内容は分からないということでした。

自分に向いているのは銀行か公務員かまで考えたい場合は、適性の違いを別の記事で整理しています。銀行から公務員へ移る具体的な方法についても、転職の記事で詳しくまとめています。

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どちらが上かという話ではありません。銀行と自治体では、実際にすることも、仕事を進める手順も違います。

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この記事を書いた人

  • 地方銀行勤務(10年以上)
  • 自治体での実務経験あり
  • 銀行への再就職経験あり

組織は依存先ではなく、自己選択のための道具。

銀行・公務員・出戻りを経験した立場から、煽らず、構造で判断材料を提供しています。


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銀行と自治体にはどちらも事務や調整がありますが、向き合う相手も、一件を終えるまでの手順も、時間の幅も違いました。公務員へ移ったあとに何をするのかは、職業名ではなく、配属された部署で決まります。

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