銀行員が自治体へ転職した理由|営業をあと30年続けるのかと感じた日

銀行員から公務員へ転職

銀行員だった私が自治体へ転職した理由は、半期ごとに振り出しへ戻る営業から距離を置き、金融の経験を地域側で使い、長く続けられる働き方へ軸を移したかったからです。

私が自治体へ転職した3つの理由

  • 半期ごとに振り出しへ戻る営業から距離を置きたかった
  • 金融経験を地域側で使いたかった
  • 長く続けられる働き方へ軸を移したかった

ただ、移った先でしんどさが消えたわけではありません。銀行と自治体の両方で働いた立場から、判断材料を整理します。

「これをあと30年続けるのか」と思った日

転職を考え始めたきっかけは、劇的な事件ではありません。年度初めの営業会議で新しい目標を見たとき、「達成してもまた最初から始まる働き方を、あと何回繰り返すのか」と感じたことでした。

銀行の営業には、区切りごとに数字がリセットされる仕組みがあります。前の期でどれだけ実績を積み上げても、期が変われば達成率はゼロに戻ります。
私自身、その仕組みの中で10年以上働いてきました。

体験メモ

年度初めの営業会議で残った問い

状況:年度末を駆け抜け、次の年度が始まったばかりの朝でした。営業会議で、新しい営業ノルマの紙が配られました。

瞬間:前年より積み上がった数字を、黙って目で追っていました。

気づき:このノルマを、あと何回繰り返すのだろう。そんな問いが、紙の上を滑っていきました。

声を荒らげるような瞬間ではありませんでした。静かな問いが残っただけです。
この日を境に、「なぜつらいのか」ではなく「この働き方をいつまで続けるのか」という時間の物差しで、自分の仕事を見るようになりました。

「あと30年」を数字にすると

定年まで30年働くとして、半期の期末は約60回。新しいノルマの紙を受け取る朝も、約60回やってきます。

目標を達成しても、半期が変われば再びゼロから始まる。こうした銀行営業の構造は銀行員の営業がきつい構造的な理由で詳しく整理しています。ただ、私が次に考えたのは、なぜつらいのかではなく、この先どこで働くかでした。

銀行員の私が自治体へ転職した3つの理由

私が自治体へ転職した理由は、半期ごとに振り出しへ戻る営業から距離を置き、金融経験を地域側で使い、長く続けられる働き方へ軸を移したかったからです。

3つの理由は別々に生まれたものではなく、あの朝の問いから枝分かれしたものでした。当時の私が何を考えていたのか、順番にお伝えします。

半期ごとに振り出しへ戻る営業から距離を置きたかった

あの朝の問いを持ち帰ってから、私は自分のつらさの中身を分けてみました。営業そのものが嫌いだったわけではありません。お客様と話すことも、融資案件を組み立てることも、手応えはありました。

それでも受け入れがたかったのは、達成が積み上がらない時間の構造でした。月末が近づくたびに進捗確認が入り、期末に達成しても、次の期にはまた同じ距離を走り直す。
この繰り返しから距離を置きたい、というのが1つ目の理由です。

距離を置く先が自治体である必要は、この時点ではまだありませんでした。ただ、営業ノルマを前提としない働き方を選択肢に並べたとき、公務員という道が初めて視界に入ってきました。

金融経験を地域側で使いたかった

あなたが銀行で身につけたものは、商品を販売する力だけでしょうか。転職を考える中で、私はこの問いに向き合いました。

期日から逆算して段取りを組む。決算書を読み、事業の状況を説明できる形に整理する。関係者の間に立って調整し、書類の不備をひとつずつ潰していく。
振り返ると、販売の実績そのものより、こうした仕事の進め方のほうが自分の中に残っていました。

お金を「貸す側」として関わってきた地域の事業や暮らしに、今度は行政の側から関わってみたい。金融経験を地域側で使いたい、というのが2つ目の理由です。
憧れというより、経験の置き場所を変えるという感覚に近いものでした。

長く続けられる働き方へ軸を移したかった


運営者

運営者

私自身、公務員試験の面接で「銀行のほうが向いていると思いますが、よろしいんですか」と問われたことがあります。自分で選んでいるのかを、静かに確かめられたように感じました。

この質問に答えながら、3つ目の理由が自分の言葉になりました。目の前の期末を乗り切る働き方ではなく、10年後も20年後も続けていける働き方へ軸を移したい。年齢を重ねても続けられるか、という物差しです。

面接官の言うとおり、銀行の営業に向いている人は確かにいます。私も、自分が向いていないとは思っていませんでした。
それでも、向き不向きではなく「どちらを自分で選ぶか」で決めたい。そう答えたとき、この転職は誰かに押し出されたものではなく、自分の選択になった気がしました。

自治体へ移っても、しんどさは消えなかった

私の場合、自治体に転職しても仕事のストレスは消えませんでした。銀行で感じていた営業目標や期限による短期プレッシャーから、自治体では調整・前例・説明責任が続く長期ストレスへ、負担の中心が移りました。

銀行員から自治体へ転職した際に、営業目標や期限による短期プレッシャーから、調整・前例・説明責任による長期ストレスへ負担の中心が変わることを示した図解

転職前の私は、心のどこかで「ノルマがなければ楽になる」と考えていました。実際、自治体に営業ノルマはありません。月末に達成率を詰められることも、なくなりました。

代わりに待っていたのは、性質の違う消耗でした。ひとつの事業を動かすために、過去の資料を確かめ、関係する部署と整合を取り、住民や議会に説明できる形へ整えていく。
締め切りに追われる苦しさではなく、正解のないまま調整が続く重さです。外から押し込まれるプレッシャーが、内側からじわじわ削られるストレスに置き換わった、と言えば近いかもしれません。

つらさの種類は変わりましたが、量が減ったという実感は持てませんでした。


運営者

運営者

私自身、何十枚もの調整資料を作り、全方位に配慮した末に「無難な結論」へ着地したことがあります。誰の人生にも響いていないような虚しさが残り、自分の中の熱が少しずつ削られていく感覚がありました。

これは自治体が劣っているという話ではありません。公平性と説明責任を前提とする以上、全員が納得できる落としどころを探す調整には時間がかかります。構造として必要な仕事です。
ただ、その構造の中で力を発揮できる人もいれば、私のように削られていく人もいます。同じように、銀行の営業ノルマの中でこそ力が出る人もいます。どちらの重さなら引き受けられるかは、人によって違うのです。

自治体への転職は、ストレスの違いだけでは判断できません。働き方の変化と合わせて、収入面を受け入れられるかも確認する必要があります。

自治体への転職で年収はどう変わるのか

自治体への転職では、前歴換算や入庁時期によって初年度の年収が下がる可能性があります。平均値だけで判断せず、月給・賞与・手当を募集要項や給与条例等で確認する必要があります。

年収の話になると、平均値がよく引き合いに出されます。ただ、平均値はそのまま「転職後のあなたの年収」にはなりません。
公務員の給与は経験年数に応じて段階的に上がる仕組みのため、平均値には勤続の長い職員が多く含まれます。地域による手当の差も大きく、同じ自治体でも入り方によって初年度の水準は変わります。

参考:給与を考えるときの公的資料

  • 総務省「令和7年地方公務員給与実態調査」:地方公務員の給与月額を全国集計した資料。一般行政職の平均給与月額は413,968円(諸手当を含む月額)です。ただし、これは勤続の長い職員も含む全国集計の平均であり、転職初年度の給与を示すものではありません。
  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」:職種別の賃金水準を確認できる資料です。金融営業職の賃金を見る場合も、月例給与と年間賞与その他特別給与額の定義を確認する必要があります。

地方公務員給与実態調査とは、調査対象・集計単位・給与項目が異なるため、単純比較はできません。

民間からの転職では、これまでの職歴が「前歴換算」という形で初任給に反映されます。換算の割合は自治体や職歴の内容によって異なり、銀行での経験年数がそのまま同じ年数分として評価されるとは限りません。
年度の途中で入庁すれば、初年度の賞与が満額にならないこともあります。

注意

銀行からの転職では、前歴換算や入庁時期しだいで、初年度の年収がそれまでより下がる可能性があります。下がった場合に家計が耐えられるかを、応募前に確認しておくと安心です。

では、何を確認すればよいのか。平均値ではなく、あなたが受けようとする自治体の条件を、募集要項と給与条例等で直接確かめるのが確実です。自治体によっては、経験年数ごとの初任給の目安を募集要項に載せています。

自治体の給与で確認する5項目

  • 基本給:前歴換算後の初任給の目安。募集要項の「初任給例」で確認する
  • 地域手当:勤務地により支給率が大きく異なる手当
  • 期末・勤勉手当:いわゆる賞与。年間の支給月数を確認する
  • その他の手当:住居手当・通勤手当・扶養手当など
  • 昇給の仕組み:初年度が低くても、その後どう上がっていくか

給与条件まで確認しても自治体が候補に残るなら、次は実際に応募できる入口を確認します。

銀行員から自治体へ転職する現実的な入口

銀行員から自治体へ転職する場合、社会人経験者採用が有力な入口の一つです。年齢上限・必要職歴・試験内容は自治体ごとに異なるため、希望地域の最新募集要項を確認します。

自治体で働く入口は一つではありません。年齢要件を満たせば一般枠で受験する道もあり、任期付職員として専門分野で働く道もあります。
その中で、民間での職務経験を前提に受験できるのが社会人経験者採用です。銀行で働いてきた人にとって、これまでの経験を評価の土台にできる現実的な入口といえます。

年齢上限や必要職歴は自治体ごとに異なります。以前より幅広い年齢を対象とする募集もありますが、応募前に各自治体の最新募集要項を確認してください。

自治体転職の入口を確認する3段階

  1. 募集を探す:希望する自治体の採用ページで、社会人経験者採用の実施有無と時期を確認する
  2. 募集要項を読む:年齢上限・必要な職務経験年数・試験科目・日程を確認する
  3. 試験の準備を始める:筆記・論文・面接のうち、配点の重いものから順に準備する

試験科目の中身や準備の順番は、自治体や年度によって差があります。何から手を付けるかは、社会人経験者枠の試験対策の記事で銀行員向けに整理しているので、具体的な準備に進む段階で確認してみてください。

銀行員の自治体転職に関するよくある質問

Q
銀行員が自治体へ転職する主な理由は何ですか?

A
本記事で扱う主な理由は、半期ごとに数字がリセットされる営業から距離を置きたい、金融経験を地域側で使いたい、長く続けられる働き方へ軸を移したい、という3つです。ノルマからの逃避だけでなく、経験と時間の使い方を見直す転職として整理できます。

Q
自治体へ転職すると年収は下がりますか?

A
下がる可能性があります。年齢・前歴換算・自治体・入庁時期によって初年度の水準は変わるため、平均値ではなく、希望する自治体の募集要項と給与条例等で確認してください。

Q
銀行の営業経験は自治体で活かせますか?

A
商品を販売した実績そのものより、説明する力・期限管理・書類確認・関係者との調整といった仕事の進め方が活きます。自治体の業務に合わせて、自分の経験を分解して伝えることが必要です。

Q
営業がつらいという理由だけで転職すると後悔しますか?

A
「ノルマがない場所」だけを探すと、前例や調整といった別のストレスに直面して後悔しやすくなります。何がつらいのか、どのストレスなら引き受けられるのかを分けて考えることが大切です。後悔しやすいパターンは「銀行員から公務員に転職して後悔する人の特徴」で網羅しています。

まとめ|営業を離れるかは自分の基準で決める

営業を離れるかどうかは、今のつらさだけでなく、年収・転職後のストレス・経験の使い方・長く続けたい働き方を比べて決めるものです。自治体は正解ではなく、選択肢の一つです。

私は、あの年度初めの朝の問いから時間をかけて理由を言葉にし、自治体へ移りました。移った先では別の種類のしんどさに出会い、収入の現実にも向き合いました。
それでも、あの選択を自分のものとして引き受けられているのは、感情のまま動くのではなく、判断材料を一つずつ確かめてから決めたからです。

あなたが同じ問いの前に立っているなら、今のつらさを否定する必要はありません。その感情を出発点にして、何を守り、何を変えたいのかを分けるところから始めてみてください。

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この記事を書いた人

  • 地方銀行勤務(10年以上)
  • 自治体での実務経験あり
  • 銀行への再就職経験あり

組織は依存先ではなく、自己選択のための道具。

銀行・公務員・出戻りを経験した立場から、煽らず、構造で判断材料を提供しています。


ここまで読んだうえで「動くか動かないか」を決める前に、
外の市場価値を確認しておくと判断材料が増えます。

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自治体へ移ることも、銀行に残ることも、それだけで正解になるわけではありません。今の働き方を続けた先と、別の働き方を選んだ先を比べ、自分が引き受けられる方を選ぶことが大切です。

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